不動産会社の業務マニュアルの作り方|属人化は「ファイル」から始まる — シクミル | シクミカ.ラボHow To
不動産会社の業務マニュアルの作り方|属人化は「ファイル」から始まる
「あの申込書のひな型、どこにありましたっけ?」
社内を見渡すと、場所を知っていそうな人がちょうど電話中。共有フォルダを探しても、似た名前のファイルがいくつも出てくる。どれが最新版なのかも分かりません。
結局、いつもの担当者が電話を終えるまで待つことになります。
こうした場面が繰り返される原因は、担当者の知識不足ではありません。必要な情報が、人ごとのフォルダやパソコンに分かれていることです。
属人化は、特別な業務から始まるとは限りません。「そのファイルなら〇〇さんが持っている」という状態から、静かに始まります。
不動産会社の業務マニュアルは、最初から分厚い資料を作る必要はありません。
社内にあるファイルを集め、業務別に整理する。そこから、誰でも同じ手順を確認できる形へまとめる。
この記事では、その準備から順番に説明します。

目次
この記事でできること・できないこと
この記事で目指すのは、見栄えのよいマニュアルを作ることではありません。
必要なときに、担当者以外でもファイルや手順を見つけられる状態を作ることです。
- マニュアル化する業務を1つ決める
- 担当者ごとに分散したファイルを集める
- ファイル名と保存場所をそろえる
- 既存資料からマニュアルの土台を作る
- 社内資料へ質問できる状態を整える
一方で、ファイルを集めるだけでは、属人化は解消しません。
古い資料と新しい資料のどちらを残すか。担当者ごとに異なる手順のうち、どれを正式な手順とするか。
こうした判断には、現場担当者と責任者の確認が必要です。
AIも、資料を渡せば正解を決めてくれるわけではありません。内容の整理はできますが、現場で使える正しい手順かどうかは、人が判断します。
不動産会社の業務マニュアル作成に必要なもの
用意するものは、特別なマニュアル作成ツールではありません。
現在の業務で使っている資料と、その内容を知っている人から始めます。
1. 対象業務の一覧
- 反響対応
- 来店・内見対応
- 申込受付
- 入居審査
- 契約手続き
- 鍵渡し
- 入居後の問い合わせ対応
最初から詳しく分解する必要はありません。整理する業務を選べる程度で十分です。
2. 現在使っているファイル
正式な手順書だけでなく、実務で確認している資料を集めます。
- WordやExcelの手順書
- Googleドキュメントやスプレッドシート
- 契約書や申込書のひな型
- 管理会社ごとの対応メモ
- お客様へ送る定型文
- メールやチャットに残っている説明
- ポータルサイトへの入稿ルール
担当者が個人的に残しているメモや、紙の資料も対象です。
3. ファイルの内容を確認できる担当者
資料の更新日だけでは、正しい内容か判断できません。
実際に使っている担当者と、最終判断をする責任者を確認します。保存場所を知っている人も整理に加わります。
4. 共通の保存場所
集めたファイルは、社内で利用している共通の場所へ移します。
ただし、すべての社員へ同じ権限を与えるとは限りません。資料の内容に応じて、閲覧と編集の範囲を決めます。
【要確認:自社で使用しているファイル管理サービス】
5. ファイルの更新ルール
ファイルを集めた直後は、きれいに整理されています。
問題は、その後です。更新方法を決めないままでは、再び新旧のファイルが混ざります。
- 誰が更新するか
- いつ見直すか
- どれを最新版とするか
- 古いファイルをどこへ移すか
更新ルールまで決めて、マニュアル作成の土台が整います。
Step 1:マニュアル化する業務を1つに絞る
不動産仲介の全業務を一度に整理しようとすると、関係する資料と担当者が増えます。通常業務と並行して進めるのが難しくなります。
- 同じ質問が繰り返されている
- 担当者によって対応が違う
- 必要な資料が複数の場所にある
- ミスや確認のやり直しが起きている
- 担当者が休むと業務が止まりやすい
「契約業務」のような広い分け方ではなく、「入居申込の受付」など、開始と完了が分かる単位にします。
1つの業務で整理方法を固めれば、次の業務にも同じ方法を使えます。
Step 2:担当者が持っているファイルを集める
対象業務が決まったら、普段使っているファイルを集めます。
共有フォルダだけを見ても、必要な情報がそろうとは限りません。個人フォルダ、デスクトップ、メール、チャットも確認します。
| 項目 | 記録する内容 |
|---|
| ファイル名 | 現在の名称 |
| 保存場所 | フォルダやチャットなどの保管先 |
| 使用場面 | どの作業で使うか |
| 使用者 | 誰が使っているか |
| 最終更新日 | 最後に更新された日 |
| 版の状態 | 最新版・旧版・確認中 |
| 確認者 | 内容を判断できる人 |
同じ名前のファイルが見つかっても、すぐに削除しません。
古いファイルにしか書かれていない例外対応があるかもしれません。内容を確認してから、残す資料を決めます。
Step 3:ファイルの重複・不足・古さを確認する
集めた資料を、重複、不足、古さの3点で確認します。
更新日が新しくても、正しい資料とは限りません。古い資料をコピーし、名前だけ変えている場合もあります。
同じ業務の資料が複数ある場合は、次の点を比べます。
- 同じ説明が重複していないか
- 資料によって手順が違わないか
- 使われていない情報が残っていないか
- 判断条件や例外対応が抜けていないか
- 口頭でしか共有されていない手順がないか
資料に書かれていなくても、担当者が毎回行っている確認があるかもしれません。
「この資料だけを見て、別の担当者が対応できるか」と考えると、口頭で補っている情報を見つけやすくなります。
AIには資料の違いを整理してもらう
資料が複数ある場合は、内容の比較にAIを使えます。
AIに任せるのは、重複や違いの抽出です。どの資料が正しいかを決める役割ではありません。
資料同士で内容が異なる場合は、現場担当者と責任者が確認し、正式な手順を決めます。
次のプロンプトでは、AIが情報を推測して補わないように指示しています。
以下の資料は、同じ業務で使用している社内資料です。
資料同士を比較し、次の4つに分類してください。
1. 複数の資料で重複している内容
2. 資料によって説明や手順が異なる内容
3. 業務手順として不足している可能性がある内容
4. 古くなっている可能性がある内容
【確認ルール】
・どの資料が正しいかを決めない
・更新日だけで最新版と判断しない
・資料にない情報を推測で補わない
・判断できない内容には「要確認」と記載する
・内容が異なる場合は、該当箇所と資料名を示す
・人が確認すべき内容を具体的に示す
【出力形式】
■重複している内容
・内容
・該当する資料
■資料によって異なる内容
・確認項目
・各資料の記載
・人が確認すること
■不足している可能性がある内容
・不足している可能性がある項目
・そう判断した理由
・現場担当者への確認質問
■古い可能性がある内容
・該当する内容
・資料名
・確認が必要な理由
■現場担当者への質問
資料だけでは判断できない点を、
担当者が答えやすい質問にしてください。
【比較する資料】
■資料1
資料名:
最終更新日:
内容:
■資料2
資料名:
最終更新日:
内容:
※AIの出力は、指示の仕方や使用時期・バージョンによって変わります。あくまで一例です。
社内資料をAIへ読み込ませる前の注意点
社内資料をAIへ読み込ませる前に、情報の扱いを確認します。
- 顧客の氏名、住所、電話番号
- 申込書や契約書に含まれる個人情報
- IDやパスワード
- 社外秘の契約条件や料金
- 社員の個人情報
- 外部へ共有できない管理会社の情報
会社で利用を認めているAIを使い、個人情報や機密情報は削除してから読み込ませます。
AIサービスによって、入力情報の扱いは異なります。
入力した資料がAIの学習に使われるか、どのくらい保存されるかを事前に確認してください。
「学習に使われないこと」と「保存されないこと」は別です。

学習へ利用しないサービスでも、入力したデータが一定期間保存される場合があります。
- 入力内容がAIの学習に使われるか
- 入力したファイルが保存されるか
- 保存される場合は期間がどのくらいか
- 登録したデータを削除できるか
- 誰が資料を閲覧できるか
情報の扱いを確認できない場合は、資料全体を読み込ませません。
個人情報や機密情報を除いた部分だけを使い、内容の比較を試します。
Step 4:ファイル名と保存場所のルールをそろえる
ファイルを開かなくても、何の資料か判断できる名前にそろえます。
ファイル名には、業務名、資料の種類、対象、更新日や版数を入れます。
- 入居申込_必要書類一覧_個人契約
- 入居申込_必要書類一覧_法人契約
- 内見対応_お客様案内文
- 入居後対応_管理会社案内文
「〇〇さんのフォルダ」に保存すると、担当者が変わったときに探せません。業務を基準にすれば、担当者が変わっても同じ場所を使えます。
保存先を毎回迷う構成では、整理が続きません。誰が見ても判断できる業務単位から始めます。
Step 5:既存ファイルを業務マニュアルにまとめる
整理したファイルから、1つの業務マニュアルを作ります。
文章を増やすことが目的ではありません。担当者が、次に何をするか判断できる形にします。
- 業務の目的
- 対応を始める条件
- 作業の手順
- 使用するファイル
- 判断が必要な条件
- 例外時の対応
- 確認する担当者
- 完了の基準
- 更新日と更新担当者
複数のファイルがある場合、AIは整理の補助に使えます。
内容を手順ごとに並べ直す。重複している説明を見つける。書かれていない項目を洗い出す。文章の下書きを作る。
ただし、契約や法令に関する内容、管理会社ごとの例外、個人情報の取り扱いは、人が確認します。
読みやすい文章と、現場で正しい文章は同じではありません。
AIが整えた後に、担当者が実務と照らし合わせる。この順番は省けません。
Step 6:現場で使って修正点を集める
マニュアルは、対象業務の担当者に使ってもらいます。
完成してから公開するのではなく、実務の中で試します。実際に使わなければ、説明の不足や例外には気づけません。
- 必要なマニュアルを見つけられたか
- 手順どおりに作業できたか
- 判断に迷う部分がなかったか
- 必要なファイルを開けたか
- 書かれていない例外がなかったか
質問された内容、実務と違っていた手順、追加が必要な例外を記録します。古い情報や、見つけにくかったファイルも残します。
一度で完成させるのではなく、質問が出るたびに直す。この運用が、現場で使われるマニュアルを作ります。
Step 7:整理したマニュアルを「質問できる状態」にする
マニュアルが完成しても、必要な情報をすぐに見つけられるとは限りません。
ファイル名や保存場所を知らなければ、複数のフォルダを探すことになります。見つからないときは、結局、詳しい担当者へ聞かなければなりません。
これでは、マニュアルを作っても担当者への質問が減らず、属人化が残ります。
そこで弊社では、シクミカ・ラボ内のアプリとして「シクミカ・ライブラリ」を提供しています。

シクミカ・ライブラリは、登録した社内資料をもとに、社員が必要な情報を普段の言葉で質問できるサービスです。
AIが社内資料を参照して回答するため、根拠のない情報を作る「ハルシネーション」を抑えながら、社内の情報に沿った回答を返します。
たとえば、不動産仲介の現場では、次のような質問ができます。
- 法人契約の申込に必要な書類は?
- 入居後の設備不具合は、どこへ案内する?
- 審査中のお客様へ送る文章を教えて
- この管理会社への申込手順は?
社員は、ファイル名や保存場所を覚えていなくても、知りたいことから必要な情報を探せます。
- 必要なファイルを探し回る時間
- 同じ質問へ繰り返し答える負担
- 担当者が休んだときに業務が止まるリスク
- 新人が確認のたびに先輩を呼ぶ手間
- 管理会社ごとの対応方法を探す手間
特に小規模な不動産会社では、一人が複数の業務を担当します。
「詳しい人に聞けば分かる」という状態では、その人に質問が集まるたびに別の仕事が止まります。
詳しい人が持っている情報を社内資料として残し、ほかの社員も自分で確認できる状態にする。これが、シクミカ・ライブラリで目指す形です。
ただし、整理していないファイルをそのまま登録すればよいわけではありません。
- どのファイルが最新版か明確になっている
- 重複した資料が整理されている
- ファイル名から内容を判断できる
- 使用する業務や場面が書かれている
- 更新する担当者が決まっている
- 登録してよい情報か確認している
古い資料と新しい資料を一緒に登録すると、AIが古い情報を回答に使う可能性があります。
だからこそ、シクミカ・ライブラリを使う前に、Step 1からStep 6までのファイル整理とマニュアル作成が必要です。
シクミカ・ライブラリが、人の代わりに正しい手順を決めるわけではありません。
現場担当者と責任者が確認した資料を、必要な社員が探して使える状態にする。そのための仕組みとして利用します。
まとめ:不動産会社の属人化対策はファイル整理から始める
不動産会社の業務マニュアルは、ゼロから文章を書く必要はありません。
WordやExcel、管理会社ごとのメモ、お客様へ送る定型文、メールやチャットに残った説明です。
最初に行うのは、これらのファイルを集めることです。
担当者別ではなく業務別に整理し、最新版と更新担当者を決めます。そのうえで、実際の手順としてまとめます。
AIは、資料の整理や文章化を補助できます。ただし、正しい手順を決めるのは、現場担当者と責任者です。
整理したマニュアルをシクミカ・ライブラリにつなげれば、社員が質問して情報を探せる状態を目指せます。
必要なファイルの場所を知っている人を探す。過去のチャットをさかのぼる。似たファイルを一つずつ開く。
そうした探し方を減らし、必要なときに社内の情報を使える形へ変えていきます。
質問が多い業務を1つ選び、そこで使っているファイルの保存場所を書き出す。属人化を見直す最初の作業は、ここからです。
FAQ
Q1. 不動産会社の業務マニュアルは、どの業務から作るべきですか?
発生頻度が高く、複数人が担当する業務から始めます。
同じ質問が多い業務や、担当者が休むと止まる業務も候補です。「契約業務全般」ではなく、「入居申込の受付」などの単位に絞ります。
Q2. 既存のファイルが多すぎる場合はどうすればよいですか?
対象業務を1つ決め、その業務で現在使っているファイルから集めます。範囲を小さくすれば、通常業務と並行して進めやすくなります。
Q3. ExcelやWordの資料もシクミカ・ライブラリで使えますか?
社内ファイルを「質問できるマニュアル」に変えたい方へ
社内に資料はあるものの、保存場所が分かれている。どれが最新版なのか分からず、担当者へ聞かなければ必要な手順を確認できない。
シクミカ・ライブラリは、そのような状態からでも検討できます。
ご相談では、現在お持ちのファイルと、社内で繰り返されている質問を確認します。
そのうえで、すぐに利用できる資料と、事前に整理が必要な資料を分けます。すべての業務を対象にせず、小さく試しやすい業務から検証範囲を整理します。
「自社の資料でも使えるのか知りたい」「どの業務から始めるべきか相談したい」という段階でも構いません。
現在の課題や、社内で探しにくくなっている資料について、以下のフォームからお聞かせください。
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